今回のVegas Pro 17の大目玉が素人でもできるマルチカメラ編集です。マルチカメラ撮影というのは、一つのシーンに複数台のカメラを配置して、異なるアングルから同時に撮影することです。その各カメラの動画を、一つの動画でまとめて見せるように作成することを、マルチカメラ編集といってます。
具体的にマルチカメラをシンクロさせてみる
ここではプロが行うような、本格的なカメラではなく、手持ちのアクションカメラやスマホを活用したマルチカメラ撮影を扱います。したがって、寄せ集めの機材を活用するだけなので後で示すような不具合の可能性がありますが、それを Vegas の機能で目立たないようにします。
音声ベースでシンクロ(オーディオを使用した配置)させますので、各動画には同じシーンの音声が記録されていることが前提になります。
上の図は、カメラ1、カメラ2、カメラ3で別アングル撮りした動画をピッタリとシンクロさせた例になります。肖像権の問題があるので、画像の拡大はできず、映像そのものをお見せすることはできないのですが、後日、再度別の動画とシチュエーションで行ったサンプルを公開いたします。
今回の動画サンプルは、「60分でわかるVEGAS」などで活躍されている「山梨の飯田」さんに提供いただきました。
1複数台カメラで撮影した動画を選んで、配置します
カメラで特定のシーンを撮影したファイルを選びます。撮影時間が重複していて、同じ場面を撮影していることが前提です。撮影は全台同時録画スタートする必要はありません。一台ずつ録画開始しても問題ありません。今回は、配置の都合上、音声が記録されている必要があります。
カメラで撮影したファイルをトラックリスト上に配置します。同一シーンでは同じ音声が記録されていると仮定して、これらのオーディオトラックを、次のステップでイベントに同期させます。
2同期させたいイベントを選択します
同期させたいイベントを選択します。イベントなどというカタカナ語は重要ではなく、同期されたいブロックをマウスでドラッグ、シフトキーを押しながらクリックなど、同期させたいものすべてのブロック(イベント)を選択します。
メニューで[ツール] > [マルチカメラ] > [オーディオを整列イベントに同期する]を選択します。
一番上のイベント(ブロック)の下位にあるイベント(ブロック)が前後に移動することで同期されます。
この作業は、結局何をやっているかといえば、選択したイベント(ブロック)の音声データを分析して、類似波形を探し出し、一番上位のトラックに波形が重なるように(音声部分がぴったり重なるように)、各トラックの位置調整を行います。音声データは全体に対して解析が入るので、長い録音の場合は少々時間がかかることもあります。
Vegasでは、この面倒な複数台カメラの動画をコマンド一つでシンクロさせることが可能です。
マルチカメラ撮影は、初心者でも、素人でも誰でもできる最も簡単な動画撮影ですので、興味ある人は是非試してください。GoProの複数台所有が理想的ですが、あくまでも見せる動画にするためなので、Amazonで安売りされている共産国製造のカメラ複数台でも大丈夫です。
本気でマルチカメラ撮影にハマった人や、やる気な人は GoPro HERO8 がオススメです。私も歴代品を愛用していますが、今回もおそらく複数台購入すると思います。
この機能が活かせるのは、手持ちの安物カメラやスマホでも、音声さえ取れていればマルチカメラが楽しめる点です。逆に、音声が記録できないカメラでは、画像ベースでじっくり手作業でシンクロさせてやる必要があります。また、反響音が強かったり、全く記録される音声に類似性が無いようなシーンでは、この機能を使ってお手軽シンクロができません。地道に、映像ベースにイベントをずらしながら微調整します。
講演会やコンサート記録のようなものなら、この機能でほぼ満足のいくシンクロができます。車外カメラと車内カメラのようなマルチカメラの場合は、共通する音声が記録されているとうまくいきますが、車内の音声が車外と違いすぎるとうまくいきません。
トラックリスト上で各トラックの映像配置を調整
あとは、トラックリスト上で各トラックでの映像配置を調整すれば、各動画がぴったりと同期して動く、マルチアングルが表現されます。
3実はプロ仕様の編集もVegasではできます
プロのマルチカメラ撮影では、ほんのわずかな秒数ずれすら嫌いますので、動画編集は「タイムコード」ベースで行います。例えば30fpsと、24fpsで撮影した動画とは一秒間に要するフレーム(静止画)数が異なりますので、これを厳密に同期させてずれないように管理してやる必要が出てきます。これを厳密に行うための仕様がタイムコードというもので、端折って要約すると画像の何分何秒何コマ目が厳密に指定できるシステムのことです。一方、民生用のアマチュア機にあるものはタイムカウンターで、区別されます。正確な表現ではありませんが、画像データそのものに正確な時間とコマ情報を含める使用であるため、一コマ単位の編集や動機が可能です。ちなみに規格と使用も複数あり、デジタル時代になってからその他の情報も含めて複雑化しています。
そんなにタイムコードはえらいのか
プロにとっては、アナログ編集(いわゆる地デジ前のビデオ撮影)でもタイムコードは必須でした。デジタルファイルで動画を扱うようになってからは、デジタル技術で多くが補えるとはいえ、必要であることには変わりありません。マルチカメラ編集で言えば、複数台のカメラの録画フレームレートが違った場合、例えば 1:1.30.30.29 のフレームがすべてのカメラの録画データにあるということは保証できず、その近似のフレームを拾ってくることになります。近似ですので、時間が進めば微妙にマルチカメラ動画のシンクロにズレが生じてきます。これを常時補正するためにタイムコードが必要になるわけです。
4要は見せ方次第
動画は見せ方次第ですので、上のタイムコード云々はただの能書き程度にとらえていいと思います。厳密なシンクロが必要でない動画の方が、日時要的には多いと思いますので、今回の音声ベースのシンクロで十分応用できます。
主婦でお料理大好きな方なら、GoProと旦那と子供のスマホの三台で、調理画面を別アングルで撮影してまとめれば立派なお料理レシピ動画になります。動画の微妙な同期ズレは、内容さえよければ多めに見てもらえます。
また、子供や孫の運動会であっても、フレームレートを上げて家族総勢で各自のスマホで動画撮影し、あとからVegasでマルチカメラ編集するだけで、飽きない動画がいとも簡単にできます。
5細かなコツ
動画のシンクロは、Vegasで簡単にできることはわかってもらえたと思うのですが、よりプロっぽく見せるためには各アングルのカメラの色合いなどを合わせてやる必要があります。特にスマホで別アングルでマルチカメラ撮影した場合、色合いの差が違和感を生みますので、この点は時間をかけてカメラ間の色合いを同じように見えるように合わせてやると、よりよい動画になります。
コツとしては、できる限り同じスマホ、せめて同じメーカーのスマホで同じような設定で撮影しておくと、多少楽になります。記録動画でないなら、モノクロを併用してやるのも手です。
マルチカメラ撮影にハマったら、ソニーのRX0のような複数台使用を前提としたタイムコードが使えるカメラを揃えるか、アクションが徹底的に楽しめるGoProのようなカメラを、全く同じものを複数台揃えるのがおススメです。全くの同型カメラに揃えておくと、色合いの調整作業などが不要になるので、作品作りのプロセスが大軽減されます。ただし、多彩なスマホ動画を組み合わせる動画も、見せようによっては面白いものができるので、先のことはじっくり楽しでいきましょう。
安く旅すること、デジタルモノを安く手に入れること、そして安くても使いこなすことをモットーにブログを書いています。典型的なデフレ対応型なんだなと自覚しつつ、日夜物欲と対峙し断捨離を心がけるも、うまくいかない毎日であります。